| 演目 | 劇団・プロデュース | 場所 | 日時 |
ゴーストライター |
G2プロデュース | 紀伊國屋ホール | 2003年6月21日ソワレ |
作・演出 : G2
出演
三上市朗・関 秀人・久保田浩・ゴング桑田
腹筋善之助・山田かつろう・瀬戸内基良
楠見 薫・武藤陶子・松下 好・川下大洋
劇評
丁寧に作られた台本だと思う
ストーリーの組み方が巧妙でそれだけで観客を十分に引っ張っていく。
芸達者な役者たちの奔放な演技に晒されてもダレない
しっかりした骨格がある。
ストーリーのつながりが緻密で無駄がなく
しかも伏線の張り方に作為的なものを感じさせないだけの巧妙さがある。
ゴーストものとしての演劇は
それこそ「天国から北に100マイル」をはじめとして数多くあるが
陳腐さを感じさせないのはひとえにG2の構成力の勝利だと思う。
とにかくストーリーの開示の仕方が絶妙なのだ
役者は実力者ぞろい。
安定感とこれまでに個々の役者として築いた雰囲気をそのまま舞台に持ち込んでいる分
観客は抵抗なくドラマに入っていくことができる。
三上市朗の強い部分と小心な部分の演じわけも良いし
武藤陶子の一途で頑固な演技から見せる傷心な部分には心を打たれる
久保田浩の演じる天使のどこかずぼらな部分も
天使の羽が砕ける段になってとんでもなく生きていた
松下好も女優という役柄を納得させるだけの凛とした雰囲気があったし
ゴング桑田の持つ包容力も作品に生かされていたと思う
彼らがゆとりを持ったいつもの力で演じるだけで
作品としては十分に鑑賞に耐えうるものになったし
久保田vs腹筋対決終了後、ラストまでの作品の美しさは
涙腺を刺激するほど印象にのこるものになった
しかし、ある意味この台本は良くできすぎているのかもしれない
G2は役者を適材適所に当てはめ
主役に力を放出するだけの場をあたえ
観客を舞台空間に引き込むことに成功した
良し悪しでいえば私も大満足となる○の2時間だったのだが
不思議なことに
良いのに作品の持つキャパシティが満たされていないような不思議な感じが残ってしまう
細かいところなのかもしれない
武藤の対極にある松下の女優でなく女性としての想いが十分に描ききれていないとか・・・
それも松下の演技が女優という役において一定のクオリティを持っているだけに
かえって目立ってしまうとか・・・
ゴング桑田のもつ闇の部分が十分に伝わってこないということも
なんとなく違和感につながっているかもしれない
ストーリー上のピースとしてゴング桑田の演技はこれ以上ないというほどのものなのに
観客は台本の広がりを感じるだけにどこか行き場のない感覚がのこるのだ
楠見薫にしても同じ。
彼女の敏腕さと冷徹さは道具立てとしてはパーフェクトなのに
彼女自身が伝わってくるわけではない
もしかしたら、この作品は非常によくできているだけに
役者たちは与えられた役柄と自分の持つキャパの範囲で
無謀な冒険やチャレンジをすることなく
しっかりとした舞台空間を構築できてしまうのかもしれない
野球にたとえれば役者のだれもがフルスイングをしなくても
軽く当てただけで流し打ちのヒットにするだけの力量をもった打者なのだ
ただし流し打ちは所詮流し打ちなので、同じヒットの打球であっても
観客にとっては
役者に作品を食い尽くすような凄みが足りなく思えてしまう
物語や演出、ライティングなども手堅いし
ある意味斬新なのだが
物語を突き破るようななにかが欠けているように感じる
せっかくラストの部分にかけて大きく惹きつける何かを持った台本なのに
役者に台本を超えて流れを大きく広げるような部分が感じられないのだ
秀逸なG2の今回の戯曲には誰も気付いていない多くのスペースがあるとおもう
天使が羽根を砕いたシーンのような
予定調和の中にくつろいでいた観客をはっとさせるような部分が
役者の技量に隠されて眠っているような気がする
G2がもっと膨らませることで、この作品には観客に与える驚きや感銘が生まれるはずだし
役者たちも目指せばそれらを表現する力を十二分に持ち合わせているという印象を受けた
繰り返すがこの作品のクオリティや役者が決して悪いわけではない
しかしながら
さらなるチャレンジの意味をこめて再演が待たれる作品であると思う
台本や演出家や役者の力量が感じられるからこそ観客は貪欲になるし
観客が貪欲になるほどの作品というのはそんなに転がっているわけではない
だからこそと思うのは私だけだろうか・・・?
評価:★★★★★★★★☆☆(even)