Stage/stage2

演目 劇団・プロデュース 場所 日時

Haldin Hotel

ナイロン100℃ 本多劇場 2003年11月15日ソワレ

 

作・演出 : ケラリーノ・サンドロヴィッチ

出演

犬山イヌコ・みのすけ・三宅弘城・大倉孝二・松永玲子

長田奈麻・新谷真弓・廣川三憲・村岡希美・藤田秀世

大山鎬則・喜安浩平・喜増祐士・杉山薫・植木夏十・眼鏡太郎

佐藤竜之慎・皆戸麻衣・廻飛雄・柚木幹斗

 

 

劇評

軽さに隠した重さ、柔らかさに隠した鋭さ

おいしい料理には常に隠し味があるように

ケラの芝居にはいつもなにかたくらみがあるような気がする

今回のナイロン100℃の公演においては10周年記念ということで

10年の歳月が見事に透けて見えるような

あるいは

軽さに時代の重さを包み隠したような世界を作り上げた

しかも人物に時代を乗せるという

人を演じながら時代を演じるようなやり方を役者たちに強いて・・・

 

今回の芝居の秀逸な部分はひとりひとりの物語の描き方にある

雑多なように見せて実はとても丁寧に

しかも、バブル時代のいい加減さをしっかり乗せながら

登場人物を作り上げていく

それはそろそろ円熟の域に達し始めた役者たちの力を

楽しんでいるようにも見える

 

村岡や長田も芯がぶれると芝居をぶち壊すキャラクター設定であるが

本当に安定して芝居の中に客を引き込んでいたし

犬山の味はもう誰にもまねのできない境地に達している

大倉は舞台にあるだけで彼の世界が作れているし

みのすけ独特の一途さは一見自由に満ち溢れたバブル時代が

実はとても偏狭な時代であったことの象徴にもなりえた

新谷のどこか自堕落っぽい雰囲気と

不思議な潔癖さと世間の汚れに迎合できない部分のミスマッチにも

とても説得力があった

しかし、極め付けは松永玲子であろう

比較的喧騒の中での中立的な演技が多かった彼女の

今回の役柄は善玉がヒールに回ってヒール以上の力を見せたようなものである

抑揚の効いた演技から人形が砕け散るまでの時間を構築する力

それは大竹しのぶが持つ破壊力と同質のものにすら思える

一皮むけたというよりエンジンを積み替えたような印象がある

 

舞台になったあちこちに欠陥のあるホテルは

ケラから見たバブル後のこの国にであり

役者たちは一人一人は時代のパーツとのダブルロール

表裏でもなくパロディでもなく

へたうまの絵のごとく時代を切り取るテクニックで

現実よりリアルに時代の匂いを描いてみせる

好き嫌いはあるのだろうし、雑との論評も一部にはあるようだが

雑にみえたりほころびがあちこちに見えれば見えるほど

バブル以降の時代の匂いを強く感じてしまうという構図は

ケラにしか作れない世界であろう

 

2003年の今を意識した戯曲の終わりにまで

ケラの粋を感じて、

ナイロンにとって秀逸な10周年記念公演となった

 

評価:★★★★★★★★★☆(+)

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