Stage/stage2

演目 劇団・プロデュース 場所 日時

止まれない12人

G2プロデュース スペースゼロ 2003年12月13日ソワレ

 

作・出演 後藤ひろひと

演出 G2

出演

岡田義徳・植本 潤・山内圭哉

楠見 薫・池田鉄洋・久ヶ沢徹・神野美紀・曽世海児

奥野ミカ・関秀人・小須田康人

 

劇評

後藤ひろひと/G2の作品には

役者の力まで計算に入れて無茶を無茶でなくしてしまうような

確信犯的なきわどさがある

今回の「止まれない12人」の再演においても

彼らは役者のパワーと能力にうまく乗って

したたかでありながら

ひとつ間違えばきわめて陳腐な三文芝居にくずれてしまうような物語を

ストーリーの骨格と役者が持つ緊張感あるいはメリハリで

素敵なチープさを内包した

極上のエンターティメントに仕上げてしまった

 

今回の役者たちがすごいのは

舞台上に疾走する超高速列車客室の緊張感を

しっかり作り上げたことである

それは電車の発車時にかかるGの演技だけではなく

(これはこれで舌をまくほどよく出来ていたが)

常に列車の中にいることを意識した動作や行動ができていないと

なりたたないはずなのだが

役者達はある種の集中力をしっかりと持ち

こともなげに列車を超高速で走らせてしまう

 

この恐るべき役者たちに後藤脚本は

お得意のヘタウマに筋の通った線をからめていく

シリアスな状況のなかに浮かび上がってくるのは

テロリスト・うつぼ公園で人を刺した女・鉄道公安官を名乗る詐欺師

精神病院を脱走して拳銃を奪った男・安楽死を請け負う医者・殺人蚊を運ぶ男・・・

酒乱の設計技術者・妙な超能力を持った男・・

ちょっとうそっぽい設定の登場人物の物語が

ドミノ倒しのように展開することに

まったく抵抗感を感じないのは

前述のとおりひたすら役者が作り上げた疾走する列車の緊張感の

演技のおかげである

抵抗感がない分だけ観客は舞台に展開するストーリーに

スピード感を感じ

舞台上の空間に意識を集中させられていく

列車が「電車でGo」運転で大混乱になる最後には

自分が観客席にいることなど忘れているし

止まったとき出演者達の呆けた顔での演技が浮いて見えないのは

それだけの緊張感が劇場全体を包み込んでいたことのなによりの証である

 

後藤ひろひとのカッコよさとチープさを一体にしたストーリー展開は

同時に疾走しているように見えるバブル以降の時代のデフォルメにも見える

それは権威であるはずの鉄道公安官が詐欺師であったり

車掌が実はテロリストだったりといった

裏表の話から

政府に要求をだすべきテロリストが

実は時代についていけないコンプレックスを持った女性に刺されていたり

危機的な状況を救うのが

TVヒーローの衣装を着た精神病院の患者であったり・・・

といったある意味ご都合主義のストーリーにまで

シニカルな匂いをかすかに漂わせている

最新技術や情報化といった

精緻に描かれた下絵にちょっとはみ出だして塗られたクレヨンのような世界は

作者や演出家が意識するとせざるとにかかわらず

大上段にこれが現代ですと振りかざすような演劇よりも

リアルに時代を俯瞰して見せる

その一方ではみ出したクレヨンの部分に対する

あたたかい愛着のようなものも感じられる

安楽死に関することなどの冷徹な視点を持ちながら

運転手がエクアドル出身だなどというかなりの無理を平然とやってのけ

出演者を一人も死なせていないところも

甘さと苦さのさじ加減を舞台全体のバランスできちんとコントロールしていく

後藤/G2ワールドの真骨頂である

 

役者についていえば

神野美紀がよい

変身時のインパクトをきちんと作れる才能はもちろんのこと

しっかりとコンプレックスを出していく演技、

さらには列車が止まった瞬間の表情など

いずれのシチュエーションにも対応していく柔軟さがすばらしかった

奥野ミカの明るさもよい

あれだけの猛者たちの中でまっとうな部分を演じて

跳ね返されないだけの強さがあった

植本潤、山内圭哉の味も捨てがたいが

小須田康人の冷徹な演技は彼が突然ドイツ語を話すことに

必然を与えるに十分足りるだけの説得力があった

他の役者にも落ちこぼれがないのがすごい

また、今回は全員が常に緊張感をきらさず

どこか挑んでいるようなところがあることに好感が持てた

 

私が観劇した回には3度カーテンコールがあった

単におもしろかったとか笑ったとかの芝居ではなかなか出現するものではない

観客が舞台とともに疾走したからこそ残る

一種の達成感のようなものが

観客の拍手を続けさせたのだと思う

 

止まれない観客を作り上げた役者達と

後藤/G2のパワー

力技という言い方もあるが

感動を与えきるだけの力が存在すれば

それだけで十分に賞賛に値する舞台なのである

 

評価:★★★★★★★★★☆(+)

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