構成・演出 内藤 達也
出演
杉山理史・小野ゆたか・宮本拓也・日栄洋祐・明石修平
松下好・金崎敬江・山中郁・中村早千水・後藤飛鳥
有川マコト・岩瀬敏司・櫻井智也・山中崇・小松田あこ・岸田健作
劇評
irregistableという言葉がある。
やめられないというようなニュアンスで使うのだが
私にとってこの手の芝居はまさにirregistableであり
つぼというか弱いというか・・・
実際のところ2時間の上演時間のなかで退屈した部分は一度もなかった
。
白い工事用コーンのような形状の突起が16個ならんだシンプルな空間に
バーが架けられ、ある種の設定がなされ
そのなかで現実と非現実の間に糸が張られていく
舞台空間の構築力と想像力、そして空間を維持する演技力が役者に問われ
提示された設定や空間を理解する力が観客に問われる
ある意味劇場ガチンコ勝負のような世界
第三舞台などの作品にもこのような空間の作り方はあったが
やはり山ノ手事情社の1997年くらいまでの作品にこそ
これらの昇華しつくした世界があると思う
彼らの舞台で提示される
削ぎ落とされ抽象化され、あるいは具象化される概念は
現実に存するものよりはるかに現実に近い印象を
前衛などと大上段にふりかぶることもなく
洗練とシニカルな笑いを劇場に満たしながら
選ばれた観客に与えていた
双数姉妹も一時期同じような表現を十分な力量で成立させていた時期があった
今回のbird’s eye viewの公演においても
表現の意図や表現技術に関して言えば
舞台としては十分成立しうるレベルであったし
緊張感と役者の力量が生み出す懐の深さのようなものも
十分だったとおもう
人間の関係性に関してのシーンの集積で構成された舞台であるが
ただでさえあいまいな意思の疎通が
時間という区切りのなかで更に制約されていく姿や
クライアントと従業員の関係が実はあいまいな定義の下に成り立っていること
男女間の関係性の不安定さや心のあいまいさ
さらには家族や会社、愛情などの場を機軸とした
関係の既存概念のもろさなどが秀逸な工夫とともに
小気味よく演じられていくのが良い
実のところ舞台上のロジックというか約束事の設定も
過去に同様な手法で作られたさまざまな劇団の作品と
比べても優れた面をもっており
アイデアを具現化するためのメソッドも
シンプルな導入でありながらきちんと展開があり
見るものを飽きさせない
しかも既存概念のあいまいさやもろさが明確にされていくだけではなく
明確にされたあいまいさやもろさが
存在し、しかも存在したままでも関係がなりたつというか
受け入れ得るところまでを描くところに
bird's eye viewの底力のようなものを感じる
最後の女性ふたりのダイアログ的なものの繰り返しを聴いているうちに
まるでパズルが解けた時のように、それまでのシーンの意味がすっと浮かんで
その先の最初の男性二人のダイアログへとつながり
この芝居の構成に潜んだたくらみに舌を巻いた
しかし、これだけのレベルでの作品を作りうる力量がある劇団だからこそ
あえて苦言を呈するとすれば
仕上げの綿密さにかけるような部分が芝居のところどころにあり
そこから生じる斑のような部分が
観客に感情を昇華させるのも妨げているような気がする
それは、エピソードの終わりの間の部分であったり
あるいは暗転にあたる部分の見られている場面展開の速度だったり
(手順は見ていても面白く気持ちよかった)
芝居の途中の一瞬の緊張感の喪失だったり
時にはダンスの中でのかすかなレベルのばらつきだったりするのだが
舞台が進むにつれてそれらがかすかな滓のように積み重なって
観客の緊張感を削いでいくのだ
本編がしっかり作りこまれているゆえに目立つことなのかもしれないが
非常に惜しい気がしてならない
役者では櫻井智也や有川マコト、岩淵敏司といったところが
当然といわんばかりにしっかりとしていて印象も強かった
特に櫻井には力強さにくわえて舞台のリズムをコントロールするような才があり
観客が身を任せられるだけの力量を感じた
山中崇には柔らかい演技であるが舞台をしっかりと包むような包容力がある
杉浦理史の演技には舞台に収まりきれないようなところがあって
それゆえこの人がもし化けるとすれば大きく化けるような気がする
日栄洋祐、明石修平などの役者にも十分な個性と存在理由が感じられ
舞台全体の幅をひろげていたと思う
岸田健作には彼にしか表現できない世界というかニュアンスがあり
しかも彼の演技の良い意味での軽さのようなものが
さらに彼の世界を鮮やかに示して見せたと感じた
また、彼のダンスにはどこか人の心を引っ張るような軽快さがあり
この面での彼の才能も再認識させられた
女優では松下好が一番印象に残ったが
中村早千水や後藤飛鳥なども清廉さと強さが共存した演技を見せた
ここの女優陣は自分を美しく見せることを本当によく知っている気がする
自分の内側を表現するための外側を美しく示すことができるところに
彼女達の大きな魅力を感じた
bird's-eye viewはかねてから見たいと思いつつ機会を逸してばかりの劇団だったので
今回期待も多かったのだが、期待どおり+αのものを
見せてもらった気がする
あと、もうすこし、裏側の緻密さがあればとは思うが
完成に至らないからこそ演劇としてのパワーを保ち続けていけるのかもしれない
そこまでのしたたかさを感じさせる何かを
この劇団は持っていると思う
評価:★★★★★★★★☆☆( +)