日時 劇団名 タイトル 会場

’05.3月13日 マチネ

絶対王様

やわらかい脚立

紀伊国屋サザンシアター

作・演出・出演: 笹木彰人

出演:

有川マコト
 菜葉菜 加治木均 郡司明剛
入山宏一 小橋川健治  
吉田羊
山中崇 杉浦理史 佐野大樹 中泉英雄

絶対王様初見である。
この劇団の公演はすでに30作品を数えるというが
きっと私はずいぶんと良いものを見逃しているに違いない

本作は
突飛でなおかつ安易なシェイクスピアの借景という皮をかぶってはいるが
実はモチーフと構成とが非常にしっかりした作品である。、

配られたパンフレットにあるとおり
「ダメな人間がハッピーエンドに成長していくのではなく、自業自得な終わりを迎える」
そのとおりの話なのだが、
お話を支える様々な要素のバランスが実によい

まず、ひとりの物語の内側と外側の描き方に使われた
「ロミオとジュリエット」の取り込み具合が非常に巧みで
なおかつ観客はその巧みさに最後の20分まで気づかない
力加減というか取り込み方というか・・・
物語のフレームへの組み入れ方に無理がないのだ

シェイクスピア戯曲の作品への取り込みは
星の数ほど前例があり、ほぼ作品全体の潤色といえるものから
一行の台詞だけをふくらませたものまで様々だが
この作品の取り込み方は私が知る他のシェイクスピア作品がらみの芝居と比べても
素直にうまいと思う
「ロミオとジュリエット」を踏み台にして描こうとするものが
「ロミオとジュリエット」のスキームに合致していて
きちんとした果実になっているのが見事だし
シェイクスピアの戯曲のかおりが
いつしか煮崩れてきちんと絶対王様戯曲のエキスになっている

それは、シェイクスピア戯曲の専門家などから見れば
「ロミオとジュリエット」が煮込まれすぎて
かおりが全部飛んでしまっているとか
感心できない改竄に満ちているとかいろいろあるのだろうが
すくなくとも絶対王様の川辺からシェイクスピア側をみれば
不必要なものはそのまま流して
必要なものにはきちんと手を加えましたということになるのだと思う
増殖していくロミオなどというアイデア・・・
シェイクスピア側の川辺からは決して現れてこないだろうし・・・

シェイクスピアに目を奪われがちだが
シェイクスピアの外側にある物語もしっかりしていて見るものを飽きさせない
伏線の張り方や個々の台詞がとりたてて優れているわけではないが
物語全体の構成が振れないでしっかりしているので
メタ演劇のような要素があったり、内側と外側が渾然一体となるような場面があっても
観客は迷子になることなく一定の方向性にきちんと運ばれていく
また、「ロミオとジュリエット」のダイジェストのいい加減さのような遊びも多々あり
暗転が多い舞台にもかかわらず 舞台の時間が淀む部分がない
隠されたものを見せる手順や物語の全体像を見せるタイミングも
後から思えば実に見事で最良のものだったと思う

それらが支えあって、最後の暗転前のシーンが見事に観客の心にのこる
「ロミオとジュリエット」の役者達が去っていくシーン
少ないライトで照らされていく孤独・・・
切ないけれど実にコントロールされた美しいシーンだと思う
そしてそれがさらに暗転後の最後のシーンへのしっかりした基礎になっていく
作者の思いのようなものがしっかりと伝わってくるのがよい

役者では有川マコト、山中崇といったところはやっぱりうまい
だが、他の役者にもばらつきがなく
手馴れた感じとしっかりしたインパクトで舞台を運んでおり好感が持てた

女優人の二人は対照的である、
吉田羊は演技にしなやかさな強さと美しさがあり
舞台にやわらかに溶け込んでいく印象を与えるのに対して
菜葉菜の芝居は硬質であるが、存在感がしっかりあり
舞台にとっての歯ごたえのような部分を受け持っている感じがした
このような異質な役者が同じ色のなかにちゃんと染まっているところが
「絶対王様」の芝居空間の間口の広さなのかもしれない

白とか青とか赤とか単色で表現できるような強い印象を持つ舞台をつくるのは
もちろん大変なことだと思うが、すごさがわかりやすいし
評価も高いと思う
しかし、今回の絶対王様のような美しい中間色の舞台は
なかなかしっかりした評価を受けにくいのかもしれない
ピュアな中間色というのはある意味形容矛盾であり
ピュアでなくても中間色だったりするので
中間色のテイストを持つ芝居は玉石混合という部分があるから・・・

しかし、絶対王様の芝居はいろんな意味で
ピュアな中間色なのだろうと思う
水面下でのしたたかな工夫に満ちたシェイクスピアの取り込みで
これだけ深く柔らかい印象を与える芝居を作る劇団は
決して只者ではありえないのだ

評価

★★★★★★★★★☆Minus

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この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい

劇評

Stage Review 2005