バランスがよいのだと思う
それは物語の緻密さと飛び方のバランスでもあり
やる気のある演劇部員とそうでもない演劇部員の数でもあり
普通の高校生とつっぱりの対比でもあり
なによりも出演者の個性や熟練度でもあるが
これだけ様々なバランスがきちんと取れていると
観客はストレスなしに物語を追っていける
そもそも物語自体そんなに奇をてらったものではない。
適度に緻密であり真摯であり適度にご都合主義である
ただ、流れがよいので観客はまるで乗り物の揺れを楽しむように
物語に身を任せていける
しかもそれぞれの出演者のキャラクターが実に丁寧に描かれていることから
観客が舞台に身を任せることが
容易なのだ
なにもかもが適度な芝居というのは
退屈かというと決してそんなことはない
ちりばめられたエピソードや
なにより役者達の演じるキャラクターを追い続けているだけでも
とても楽しい
役者たちも
観客席を席巻するほどには力がない
(たまたま前日に大竹しのぶと松尾スズキの二人芝居を見ているから
特にそう思うのかもしれないのだが・・・)とはいえ
ひとり一人がとても魅力的である
まあ自らの感情の襞を
観客の心の内側に魔法のように蘇らせるという段階には
まだ至っていないというか
大竹しのぶのように感情に微妙な変化をつけたり
舞台全体のトーンをひとつの動作で決めてしまうような
演技をするだけの力量をみることは出来なかったが
ただ、芝居のパートとしてきちんと機能するだけの器量がない役者は
ひとりもいなかったし
観客に感情や思いを伝える能力は十分であった。
プロとしての最低の力はまちがいなく持った役者たちだとおもう
また、ひとりずつの演技が表現する深さが
100%観客を取り込むことができなくても
台詞の受け渡しなどの基本的な部分にミスがない上に
細かいところまでしっかり作りこまれた舞台
たとえば舞台を分割して使うときの
陰の部分の演技の自然さ
他の役者に観客の視線を集めているときにも
流れている時間を舞台上で演じ切る能力が
個々の役者にあるから
舞台は維持されていたのだと思う
役者では・・・
石川ユリコ、細川洋平といったところが
役の大きさに負けないで舞台をしっかりささえていた
草太役の永野宗典もヴィヴィットな演技で目を引いた
後藤飛鳥、内田慈といったところは初見ではないが
演技に安定感があって観客が身をゆだね得るだけの力を感じさせた
まあ、ブルドックの皆さんの押しの強さはさすがで・・
吉本菜穂子・信川清順あたりは舞台栄えがするほどパワフルで・・・
もう観客の方が息を呑むほど
それゆえ町田マリーの静の演技が際立って生きたのだと思う
大竹えりも押さえながらここ一番で刃物のように鋭く役を演じ切った
でも、一番印象に残ったのは
清田ゆきの実存間というか存在感ではあったが・・・
しかし、この舞台が持つ一種のわくわく感のようなものは
一体どこから来るのだろうと思う
比較的若い役者達の可能性と自分が高校生の頃持っていたなにかを
重ね合わせているような気もするのだが・・・
それだけでは説明できないような
なにかをこの芝居は内包している気がする
ひとつにはやっぱり演出の力だと思う
繰り返すが村上大樹は本当によい仕事をしたと感じる
このバランスを構築したのは間違いなく作・演出の力だから
役者達がプロとしての資質を満たしているとはいえ
その力を十分すぎるほど引き出したのは
村上大樹の演出の隙のなさだったのではあるまいか
ある意味陳腐でオーソドックスな手法の積み重ねであっても
(ダンス・暗転・ご都合主義の作劇等)
小さな良い演技の積み重ねは
時間を忘れさせるほどに観客を惹き付けるのである
そのことを証明しただけでも
村上大樹の力量は十分に評価されるべきだと思う
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