| 演目 | 劇団・プロデュース | 場所 | 日時 |
One Your Toes |
Adam Cooper's Company | 簡易保険ホール | 2004年5月04日マチネ |
Words by Oscar Hammerstein
Music:Richard Rodgers
Directer:Paul Kerryson
Choreographer: Adam Cooper
Staring
Greg Pichery/Gabrielle Noble/Jay Webb/Adam Cooper/Matthew Hart/Anna-Jane Casey
Sarah Wilder/Juliet Gough/Gillian Bevan/Russell Dixon/Ivan Cavallan
Ensemble
Francesco D'Astici/Alistair David/Liesl Dowsett/Ben Garner/Emma Harris
Rebecca Jackson/Benny Maslov/Ebony Molina/Isaac Mullins/Pippa Raine/Londsey Wise
Swing
Kathryn Broadribb/Amy Ellen Richardson/Karl Stevens/Craig Turbyfield
劇評
タップの音は人をときめかせる。
軽いステップからスピードに乗って・・・
ダンサーが一線を越えたリズムとスピードでステップを踏んだ瞬間
観客にはこの上のない快感が訪れる
バレエダンサーの優雅でありながら切れのある動きは
人の心を豊かにする
美しい歌もしかり・・・・
ただ、ミュージカルのすばらしさはそれだけではない
Adam Cooperの振り付けにおけるタップダンスの扱いや
彼の作品の中での歌の比重がどれほどのものか
実は彼自身のタップダンスや歌の能力とともに眉唾もので出かけたのだが
彼の才気はほとばしるというよりは湛えるように舞台全体を統制し
タップダンスのシーンにおいても
何度か舞台へと引き込まれるような部分を作り出していた
Adam Cooper自身のタップも十分に及第点だったと思うし
集団としてのタップダンスの振り付けも無難だったと思う
歌についても文句のない出来で
特にバレエ団のプロデューサー役、Gillian Velanが
披露してくれる心にゆっくりとしみるような歌は
Richard Rodgersのメロディーで会場全体を包み込むような強さがある
同じようにAnna−Jane Caseyにも魅力を感じる
実直で誠実な歌い方がRodgersメロディをこんなに惹き立てるものかと
驚きさえ感じる
但しミュージカルとしてこの作品を評価した場合
Broadwayなどで作られる数多いミュージカルと比較して
総合的に突出した秀逸さを見出すことができないのだ
相応に高いレベルではあるが平均点といったところだ
たとえばバレエのレベルが高い分だけ、
悪くないタップシーンや素の台詞についてある種の弱さを覚える
彼自身については歌も悪くないし、台詞もそつなくこなしてはいる
さらにはタップを中心としたシーンの動的構成もきちんとしているのだが
それぞれの部分にどこか借りてきた猫がすましているような印象がある
それはタップのシーンが劣っているというよりは
バレエをベースにしたシーン構成や彼自身のパフォーマンスに
何かを超越したような秀逸さがあり
タップを中心としたシーンとの調和が崩れてしまうことからくる
アンバランス感に近いものだとおもう
彼が優れているのはやはりバレエの世界であり
バレエが絡んだシーンになると
シーン全体のパワーのようなものが一杯に膨らむ
ただ一方で彼がいわゆるバレエを演じると
そのすばらしさがそれまでのシーンを蹴飛ばしてしまうのだ
このことが良い方に出ている部分もたくさんあることは事実だ
Act1の最後にロシアバレエ団の公演として演じられる
「ゼノビアの女王」のしっちゃかめっちゃかが
後半の冒頭で
ユーモアとして解釈されたという台詞に繋がりえるのは
ひとえにしっかりとしたバレエの技量の上に崩しが入っているからだと思う
特にSarah Wilderの抜群の安定感が感動的で
難しい動きをゆとりを持って演じる彼女の姿には
ある種の慰安すら感じるほどであった
リフトされた状態での身のこなしの柔らかさもよい
彼女の演技にも支えられてAdam Cooperの
切れがある超ヘタウマ演技がなんと生き生き見えたことか・・・
バレエにからんでこんなに笑ったのは初めての体験だったし
この舞台がミュージカルというジャンルの上にあることを認識させられた
数少ないシーンでもあった
ただ、全体として、よい悪いは別にして、
彼の振付や構成にはバレエが目を引くシーンが多い気がする
この舞台の一番の売りというかハイライトは
多分最後の「十番街の殺人」の部分ということになるのだろう
Adam Cooperが一番生き生きと動けるシーンでもあり
同時に彼の才気、振付師としての才能とダンサーとしての才能が
まるで坩堝に熔けて客席に噴出するような感覚させある
最後のフィニッシュが繰り返される部分では
笑いがありながら同時に
ダウン寸前になってさらにパンチを浴びせられるような迫力に押されてしまう
震えがくるような感動がそこにある
しかし、振付として一番秀逸なのはその2シーン前の
タップとバレエのコラボレーションシーンだろう
タップ自体が一番乗った感じがして
本当にフレッドアステアの映画を見ているよう
そこにバレエの統率された動きが加わることでタップの動きにも華が生まれる
国旗の使い方もうまく
異文化が溶け合っていく姿がとてもうまく表現されていく
痺れるような良さがここには見られる
この作品のレベルは、個々の要素を見るとすべてOKで
一部突出したよさもあるのだが・・・
この作品については、いろいろとすばらしい部分が多いにもかかわらず
何かが足りない気がする。そうミュージカルとして何かがたりない
Broadwayの秀逸なミュージカルやレビューと比べて
歌や踊りの技量だけではカバーできない何かが
この作品に欠けているような気がしてならない
表現しにくいのだが強いていえば
昔Broadwayで見た「42nd Street」や「Sweet Charity」がもつ
ダンスや歌の先にみえるなにかがこの作品からは見えてこないのだ
すばらしい、だけどすばらしさの先にある
見る者に与えられるべき充足感のようなものがこのステージには欠落している気がする・・・
喝采の先にある満たされた心に心地よい重さが少ないのだ
それは、Adam Cooperが持つステージに感じる彼の想いに
通常のミュージカルに感じる製作者の想いとの
差異を感じるからかもしれない
Adam Cooperには自ら人を感動させるだけの技量がある
しかし、彼の圧倒的な能力に裏打ちされたパフォーマンスで人を感動させることができても
ひとつの演目全体を通して作り手自身がもつ何かを表現するような
そんな視点が欠けているような気がしてならない
元来ミュージカルにはそんな複雑なストーリーがあるわけでもなく
むしろ「2インチの嘘」のような下品なジョークが当たり前に演じられ
下卑な笑いと洗練されたパフォーマンスのカオスの中に
プロデューサーやディレクターの想いがつづられていくものなのだ
その根本的な生き様のようなものにたいする泥臭い想いをAdam Cooperはどれほど
この作品の中に織り込んでいるのだろうか
Adam Cooperの技量に心打たれながらも
一方でBroadwayのプロデューサ達の持つ
才能の奥深さのようなものを感じてしまった
Adam Cooperの作品が
.決して悪いというわけではないのだが・・・
少なくともOscar HammersteinはAdam Cooperの作品に
100%の満足は感じないような気がする
評価:★★★★★★★★★☆( ー)