まっとうに作られた作品である
G2の作る舞台には明確な物語が存在するのだが
これほどべたで律儀で
しかも興味の尽きない物語を見たのははじめてである
特に後藤ひろひとと組んだときなど
G2演出作品にはどこかでわざと無理を通して形にするところがあり
その無理が凡庸であると作品ももり下がるみたいなところがあったのだが
今回の作品にはその無理自体が感じられない
しかもおもしろい
わくわく感をもたらす嘘がないのに
わくわく感が消えない
まあ、ちょっと手に届かない昔のお話で
それ自体の虚実が私のような歳を喰った年齢層でも
わからない時代設定になっているので
嘘を見抜けない部分もあるのだが
少なくとも、オープンリーチのように
嘘を嘘ですと開示してなおかつ観客を楽しませるような手法を
今回G2はあっさり放棄している
素材的にもそんなに軽めの話ではない
今は死語となりつつある労働組合の話や
戦時の空襲の話などもたっぷり盛り込まれているのだが
G2の作劇は話に強さを持たせることはあっても
話をもたれさせることはない
この物語のコアになっているのは
昭和前半の仕事に対するスタンダードである
仕事を一生懸命やることが
ある意味格好よかった時代
一途さが評価されていた時代
その中で自分の過去をしっかり背負って律儀に生きてきた男が
登場する
ひとつ間違えば時代錯誤だったり
芸術座でお弁当タイムをはさんで見るようなお芝居にもなりかねない話なのだが
G2は芝居の作り方までを昔に戻したわけではない
その演出の切り口の巧みさで
観客をひきつけて離さないちょっとよい物語に
味付けをして見せた
もちろん中心になる役はあるのだが
大看板となる役者をおかずに
ちょっとした群像のように作り上げたのが成功したともいえる
人情とか人同士のしがらみに対する表現に
足を取られずに淡々と描ききったのもよかったのだろう
何かを作り続ける情熱とか
職人の頑固さの裏側にある真摯な気持ちなどが
丁寧に浮き彫りにしていった
G2の地味であるがしっかりとした仕事に
観客はぐっと心を掴まれた感じがする
主役級の二人、須藤理彩・長谷川朝晴の演技は抑え目だったが
それがかえって芝居のトーンを深める結果になった
脇を固める役者達がその分スペースをもらい
舞台全体に活気をもたらしたような気がする
抑え目であったとしても二人に存在感がなかったわけではない
長谷川朝晴の頑固さにはしっかりとした重さと柔らかさがあって
きちんとストーリーの外側を構築していたし
須藤理彩の二役は
演じわけと統一感が見事に両立していた
昭和10年代の彼女の演技の闊達さと
昭和30年代の彼女の明るさや強さの微妙な違いが
どれだけ物語の奥行きを作っていたことか・・・
脇では、久保酎吉と山西惇のからみに見ごたえがあった
物語の肝の部分にあたるところでのふたりの名演が
芸術座お弁当芝居からこの舞台を浮揚させる大きな要素になったと思う
陰山泰は狂言回しの役柄であるが
その口当たりのよさが物語を柔らかく包んだ
押すのではなくゆっくりとそこに風呂敷を広げて
観客を取り込むような演技とでも言うのだろうか・・・
そこにかもし出される雰囲気のなかで観客は芝居のコンテンツを
ゆっくりと自分の中に取り込めたような気がする
新谷真弓の演技もまた特筆物である
邪魔にならない強い存在感とでもいうのだろうか
しっかりそこにありながら、でも特別強いインパクトを与えることなく
物語の要素として存在している
そして舞台のスピードのようなものをつかさどる演技をしていた
そばで言えば麺や汁ではなく七味のような存在
鮮度や切れがコンスタントに要求される役回りだったと思うが
しっかりと責務を全うしていたと思う
豊原里美はキャラクターをしっかりと作りきって好演
竹下宏太郎は軽さと真面目さの両方が含まれた演技を
しっかりとこなしていた
木下・内田・草野・菅原といったところの演技も
バランスが良く好感を持てた
廣川三慶の演技にはしっかりとした抑制があり
それが、口が利けなくなった彼の歴史に
大きな信憑性のようなものを与えていた
久保酎吉とのからみの中の間がとくに絶妙で
舞台の中に日常と非日常のなかにあらわれた
現実をしっかりと作り出していたと思う
基本的なテーマについていえば
この芝居はけっこうコンサバティブなものだと思う
それを奇をてらわない手法で
今様の芝居に作り上げていったG2の挑戦には
おおきな拍手が送られてしかるべきである
モダンジャズカルテットによる
クラシックナンバーの演奏会のようなものなのかもしれないが
クラシックのナンバーであることが
モダンジャズの真の切れを引き立てることだって多々ある話で・・・
G2のネオクラシックへのチャレンジに
私は賛辞を贈りたいと思う
少なくとも、私はこの舞台を時計を忘れて
とても楽しんだのだから
お芝居のPageに戻る
R-Club Topへ戻る