| 日時 | 劇団名 | タイトル | 会場 |
|---|---|---|---|
’05.6月04日 マチネ |
G−UP presents |
Deep Forest |
スペース107 |
作: ほさかよう 演出:板垣恭一 出演:
|
この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい
最初、ちょっと暗転が多いかなという気がした
シーンごとのつながりが少なく
シーンが淡々と提示されてくように感じた
しかし、突然それが非常にうまく機能していることに気づく
それぞれのシーンでしっかり提示すべきことが
シーンの中できちんと整理されているから
観ているものにとってシーンの経過数と物語の理解度がきちんと比例するのだ
実は二つの時間が組紐状になって進んでいく
ミステリー仕立てというかそれなりに
複雑な物語構成なのだが
観ているものにストレスがない
西洋童話にありがちな
ある意味残酷な物語であるにもかかわらず
観客がまるでやわらかい布につつまれるように
物語の渦にまきこまれていったのは
このシーンの構成の仕方が大きいのではあるまいか・・・
それぞれのシーンに伏線としての謎はあっても
異物がないことで観客はすなおに舞台と向かい合えた
また、物語が収束していく部分までは
シーンのなかでの作り手の視点が非常に明確であった
それが観るものをしっかりと舞台上の出来事の上にのせていたとおもう
役者の出来もよかった
物語の軸になるロールを演じた楠見薫は
どのシーンにおいてもまわりに影響されることなく
しっかりとトーンを崩さない演技をした
もちろん、彼女が舞台に立って
通り一遍の心に何かを秘めた魔女役だけで終わるはずもなく、
いろいろとやってはくれるのだが
舞台から出て場外乱闘をしようとも
本日の面白いものとして童話の物語のなかで座頭市を見せようとも
(新谷にもおなじ本日の面白いものがあったのだが
これらは日替わりだったのだろうか?)
ひとときたりとも、心に秘めるものを演ずる気持ちを失っていなかった
それどころか、余興に近いものすら
物語の裏側にある幸せだった頃のありふれた日常の楽しさを
見事に照らし出す光にしてしまうようにさえ思わせる手練の技・・・
この物語をつなぎとめる力と広げる力のすごさには
脱帽せざるをえない
この物語に対する彼女的な執着心というかテンションがあるからこそ
彼女を中心に物語りは回りえたのだと思う
新谷真弓もよかった
この数年、彼女は観るたびに進化し続けているような気がする
ケラマップ(暗い冒険)あたりから
心の内側をふっと浮かび上がらせるような
表現に彼女にしかできないなにかが生まれていたのだが
今回の彼女の演技ではそれがしっかりと明確になり
さらに一種類の変化球だけではなく
様々な感情のボールを客席に投げられることを
証明して見せた
直球でぶつけてくるような感情表現だけなら
他にも優れた女優はたくさんいるが
彼女はそこに醒めたような冷静を込めることができる
激しい感情にも冷静さを矛盾なく混在させて表現しうるのだ
その場に応じた温度をしっかりと表現できる能力は
観ていても非常に魅力的であり
今回のような役柄において
彼女だから表現できる境地を明らかに彼女は身につけていた
伴美奈子は
人の正直さをきちんと表現することが出来ていた
実直に演技ができる女優である
新谷真弓の演技がある種の繊細さで成り立っているとすれば
すべてを取り込むような強い柔軟さが彼女の演技にはある
男優では細見大輔の狂言回しぶりに
やはり目がいったが
山中崇の実直な演技も物語を膨らませた
伴の演技にしてもそうなのだが
今回の役者達の演技には
物語をささえるだけはもったいないほどの切れが
内包されていたと思う
特に山中の演技の切れは
新谷との役柄の関係性の表現において
観客が新谷の心の動きを理解するのに大きなバックアップになっていた
かれの演技が凡庸なものであったら
新谷と楠見の間の関係性がきっとぼけていたのではあるまいか
切れという意味では井之上チャルの演技にも
無駄なく研ぎ澄まされたような部分があって
物語に火をしっかりつけていた
また、
松嶋亮太、小橋川健治、浅野智、久水広太といった村人役から台
台詞のない少年役の若林亜紀の動作にいたるまで
物語を語る以上の強さやキレ、さらにはしなやかさに満たされていて
物語全体におおきなふくらみを与えていたような気がする
正直なところ、脚本自体には
観客が感じたほどの重さや深さはなかったのだと思う
ただ、実がつくだけの枝はしっかりと作られていた
また、一見絡み合っているような枝葉にも
作者はしっかりと実がなるスペースを残して見せた
役者達はスペースにしっかりと葉を茂らせ
楠見や新谷などがたっぷりと果肉を持った
実をつけて形にしてみせた
また、その樹をしっかりと剪定し物語の形にした
板垣恭一も十分賞賛に値するとおもう
なんだかんだといっても楠見・新谷が目立つ芝居であるが
よいバックがしっかりサポートしてこそ浮かび上がった
彼女達の存在感なのだと思う
よいバックのすこし卓越した部分の集積が
2時間をとても濃密なものにしたのと感じた