| 日時 | 劇団名 | タイトル | 会場 |
|---|---|---|---|
’05.10月1日 |
MCR |
LIFE IN BOX |
新宿シアターモリエール |
作・演出 ドリル出演:
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この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい
劇場空間に対して斜めに切られた正方形の舞台に2本の花舞台がつづいている。
ちょっとわくわくさせる形状の舞台を観客が取り囲んで舞台が始まる。
閉鎖されたその空間の内側ではいくつかの人間関係が演じられる.
何かへの従属とそこからの離脱の力関係で成り立っている組織。会社だったり、劇団だったりあるいは組織というには小さい同棲中のカップルだったり、先輩と後輩だったり・・・
それらの空間が一枚ずつページをめくるように、時には綾取りのように結び付けられていく。ルーズな関係性のなかで繋がったひとつの物語が他の物語を侵食していく。
人間の関係性が構築されているのだが、関係性にしがみつくには舞台上の誰もが何かが足りないように見える。足りない理由はいろいろで、しかもそれぞれのシーンでその足りなさがしっかりと描かれていく。
やがて、物語の相互関係のなかで自ら離脱していく人、離脱せざるを得なくなる人、さらには関係性を見つけていく人があらわれると、それらが舞台の上で丁寧に描かれていく。
個々の物語はありふれたトーンで演じられているが、一方では、洗練されたぼけとつっこみが駆使され、必要なときに必要を満たすだけの創意があふれ、さらに表層的な部分だけでなく本質的な部分にもの物語を侵食しうるだけの説得力が内包されている。
伏線も緻密に張り巡らされているわけではないが、4つの物語がひとつたりとも漂流しないための工夫があって、見ているものは違和感なくそれぞれの物語やそこから溶け出したものに身を任せることができるのだ。伏線のねたばれはよくないとおもうのだが、ひとつだけすると、「俺達公務員ですよ」という一言がしっかりと会社の崩壊シーンへと物語をつなげていたりする。
ぼけと突っ込みの要素だけを見てもけっこう飽きないのだが、物語が進んでいくと、さまざまに描かれる登場人物どうしの関係性に目が移り、ぼけとつっこみへの興味がまさにタイトルどおり箱の中の人間関係にとってかわられる。そのとき舞台の上の様々なことがわくわくするほど面白くなってくる
ドリル・櫻井智也がそれらの人間関係をみつめる視線にはある種のやさしさがあって、観客をして提示された空間を受け入れさしめる素地を作り出しているというか、本質を観客のものとして理解するのをずいぶん助けていたとおもう。もし、他劇団でおなじことを描こうとすれば、もっとシニカルな視点が背景にうまれ、それが観客達のこころを閉ざしたり、耳をふさぎながらしたり顔をさせたりするのではあるまいか。
その一方でかれは冷徹にそれぞれの関係性の結末を表現していく。優しい視線を持ってはいても、彼の作る世界には甘さやブレがない。多少デフォルメはあるものの奇を衒った部分はないし結末にもまっとうにフォーカスされた現実への厳しさが説得力を持って語られる。それゆえそれぞれの物語が収束していくなかで提示される風景に観客は最後に物語を看取ったような満足感を感じることが出来るのだと思う。物語というか関係の表現のなかで一番秀逸なのは、福井喜朗と黒岩美佳が演じたカップルの顛末だが、それ以外の物語に含まれる登場人物の関係も非常によく出来たものが多い。
それぞれの物語が不条理といえばどこか不条理で、その不条理さこそがおもしろいのだが、ちがう種類の不条理が存在する物語が、それぞれの不条理を許したまましっかりつながっていくところがさらに興味を倍増させたりする。この物語のクオリティやその距離と関係性のうまさが観客の興味を膨らませ1時間50分捕まえきったということだと思う。
ただ、この舞台、全てがパーフェクトというわけではない。
よい部分がたくさんあるのと同様に緻密さを欠く部分もけっこうあったりする。暗転のタイミングがちょっとずれたり、せりふのない役者のテンションの出し方が一瞬ずれたり・・・
暗転の間に現れるメッセージも文章として多少長すぎたり、洗練に欠けたり・・・
その分舞台に対する観客のテンションがばたついてしまったような気もする
もっと磨き上げればそれだけ観客の想いを大きくするような素材を持っている舞台だけにもったいない気がした。
役者については舞台を支えるには十分な力があったと思う。
前述の福井・黒岩には乾いた演技をしっかり維持していくだけの力量を感じた。黒岩についていえば一瞬の感情爆発や刃物を含んだせりふに客席全体を一気に捕まえる力があったと思う。
渡辺裕樹も印象にのこった。彼の変わり身のよさというか柔らかさは彼だから作りうる空間があることを証明して見せた。
山田奈々子の舞台上の集中力のようなものも観客の関心をしっかりと舞台にとどめたと思う。
横山真弓、伊達香織も好演であったし上田楓子は自分の役がもつ物語をきちんと舞台上に見せたと思う。
小堀裕之と櫻井智也の作り出す空間はもう職人芸で、非常に見ごたえがあった。小堀の芸人としての舞台上での押しもすごいが櫻井の突っ込みもパワーこそ小堀にまけるものの、的を決してはずすことなく切れもよかった
舞台の密度が非常に高いとか、緊張感が伝わってくるとかいう感覚はなかった。
それでもまったく時間を感じずに舞台に集中できたのは、繰り返すがやはりドリル脚本のよさというかかれが描く物語の視点の確かさによるものだと思う。
帰りに前作のDVDを買って(世にも俺を惑わせる花)家で観たがやっぱり物語は面白く視点はしっかりしていて、でもどこか雑な作りが気になる作品だった。
この満たされ方と気になり方こそがMCRの味なのだろうか・・・