日時 劇団名 タイトル 会場

’05.12月04日 

双数姉妹

君はオロチ

シアターTOPS

作・演出・小池 竹見

出演:
今林久弥・山下禎啓・近藤英輝
阿部宗孝・五味祐司・井上貴子・大倉マヤ
小林 至・中村 靖・井上伸太郎・松本大卒
帯金ゆかり

評価

★★★★★★★★☆☆マイナス

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この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい

劇評

Stage Review 2005

現代劇半分時代劇半分というのがうたい文句であるが、現代のちょっとシニカルでハートウォーミングなロマンスを,コンサバティブな時代劇が侵食したというのが実態かと思う。 現代劇は、ちいさく不純な嘘で結びつけられた30代男性と女子高生が、かけ違った事実をそのままに思いを寄せるお話であり、時代劇は十二社の由来ともいえる伝奇物語である。二人の黒子を狂言回しに配することで空間の約束事を明確にした中で二つの物語は、最初は整然と入れ子のように、そしていつしか重なるように進行していく。

正直いって、二つの物語の舞台転換には若干散漫な印象もあったしひとつ間違えば、どうしようもなく取り散らかった舞台になる危険性をはらんだ構成とも危惧したが、見終わってそのような印象のかけらすらないのは、ひとえに双数姉妹という劇団の力量がなせる技なのだろうなと思う

どちらかといえば、現代のなにげない物語をきちんと舞台の上に輪郭として現出させる方が、時代劇に比べて彼らには手馴れた仕事ともいえるのだろうが、終盤の時代劇が重なったときの物語の重量感としっかりととりこむだけの糊代をもった舞台を作るには観客をしっかりとコントロールするだけの工夫や演技力が必要かと思う。それは物語の内容だけでなく舞台の雰囲気が持つ重みなども関係したことであり、ある種の芝居に対するセンスのようなものが強く問われる世界ではあるまいか・・・。

一方の時代劇は彼らにとっては初めてとのことだが、こちら側の作り方にもとまどいや違和感はほとんど見られなかった。時代劇を演じるというより、むしろ物語をしっかり伝えるという意思が役者からしっかりと伝わってきて、しかも時代劇であってその中に含まれる真実をけれんなく演じる真摯さと力量が役者ひとりひとりにあり、全体として輪郭のくっきりとした印象になった。

双方の物語にしっかりとした芯があり、組み合わされるべき臍がきちんと作られているからから、ふたつの物語がやがて重なり合うとき、役者の演技はまるで魔法のように瑞々しく見える。時として二つの物語が互いに借景となってもうひとつの物語を語らせているようにすら見える。黒子たちが現実の世界の碇になってふたつの物語を進めていくのだが、物語が満ちて彼らの想いすら演劇という表現に取り込まれるとき、二つの物語は黒子の手をはなれてそれぞれに強い輝きとともに観客を圧倒するのだ。      そもそもシアターTOPSというのはその輝きに観客が浸るのにはとても適した大きさなのかもしれない。現代劇の主人公たちのかもし出す切なさも時代劇の登場人物たちの想いもストレートに観客にやってきて、ふたつの時代たちを縦に突き刺す時間と場所の属性が舞台上で融和するときの熱い感覚を観客はしっかりと手にすることができる。彼らの試みがしっかりと感じ取れる作品である。

 

役者のなかでは北京蝶々から2回目の客演となる帯金ゆかりの演技が一番印象にのこった。前回の双数姉妹でもすでに感情表現のまっすぐさに天性のものを感じていたが、今回の女子高生役においても、観客がのみこまれてしまうほど想いをまっすぐに伝えていた。普通の役者が力んで出してくるような心の動きを彼女はまるで直通回路を設営したように観客に伝えてしまう。力がともなわないで伝わってくるものを観客は拒むことができないのだ。まだ、変化球のなげる技量には欠ける部分がありそうだが、非常に楽しみな才能であることに間違いない。

五味祐司のうまさも今回は目をひいた。急に演技のランクが一段あがったような印象がある。中間のあいまいなキャラクターの演技には多分不器用さがあるのだろうが、役がしっかりと定められた芝居では彼のもつある種の強引さがよい方向に出るのだと思う。また、演技にやわらかさとまろやかさのようなものが加わった感じもする。井上貴子にも同様なことが言えて、この二人の演技で時代劇側の舞台の奥行きのようなものがずいぶんと広がったような気がする。

大倉マヤは時代劇側の凛とした演技もよかったが、現代劇側のキャラクターの作り方のうまさがさらによかった。せりふに彩があるのとを含めて彼女の演じるもが持つあいまいさがしっかり見える演技をしているのがよい。彼女が作る空間はそのまましっかりと舞台の輪郭になっている。帯金の表現するものがしっかりと観客に伝わってくるのは、裏で物語の輪郭をささえる彼女の演技のクオリティの高さが大きいと思う。
中村靖、阿部宗孝、小林至などの演技の安定感もすばらしかった。今林久弥、山下禎啓、近藤英輝の一家のレベもレベルは高い。ストレスなく物語りに取り込まれていくのはひとえに彼らの演技のおかげだと思う。

チャリT企画からの客演である伊藤伸太郎と松本大卒には、演じる世界の意図した薄さのようなものが感じられたが、それも芝居全体を鳥瞰すると効果的であったと思う。つらいバランスのなかでの黒子の演技だったが最後にきちんと報われていたと思う

 

オキュパイあたりから双数姉妹の演劇には実りをしっかりともたらすチャレンジが多い。今回も半分時代劇半分現代劇という名称で、二つの芝居空間を繋ぐ普遍性をしっかりとりこみ、物語の重なりの先に見えてくるものをしっかりと表現していた。
このような成果のしっかりあるチャレンジにはより大きな賞賛の拍手がおくられるべきであると感じる。派手さとか意外性とかいう世界においては長考を要する作品であるが、少なくとも今回のチャレンジの実りは間違いなく相応の大きさを持ったものだったと思う。

口上を含めて、満たされた気持ちで出来る拍手はよい芝居に恵まれた運のよい観客の重要な特権だと感じたことであった