日時 劇団名 タイトル 会場

’06.5月14日 

コローレプロデュース

ハルちゃん

シアターV赤坂


脚本:ラサール石井
・演出:田村孝裕
出演
デビット伊東・松永玲子・八十田勇一・国分佐智子
野本光一郎・古川悦司・鈴木歩巳
本間剛・星野園美・原武昭彦
水野あや・関川太郎・平野圭・七月王・高岩正彦
新納敏正(声のみ)
小林美江(14日ゲスト)

この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい

劇評


stage review 2006

評価

★★★★★★★★★☆

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細かい部分の不整合は確かにある。

ちょっと無理もあるし、物語の運びに先が読めるような部分もある。

だから、もし、この物語を文章にして読んだら、たぶん陳腐なものになるに違いない。

しかし、舞台に上がって役者たちにより見事な立体感が与えられることにより

物語は極上のエンタティメントになった。

 

物語に血を通わせた一番の功労者は松永玲子であろう。彼女のテンションの使い方に舞台はしっかりと支えられた。元々ニュアンスを伝えたりイメージを構築したりするのは上手な女優さんですが、今回は雰囲気を作るというよりテンションの強弱で与えられたキャラクターを演じて見せた。力で押す部分とすっと引く部分、さらには不機嫌に黙り込む部分、それは舞台全体のトーンを明確に決めていく

彼女が優れているのは、それだけの力がありながら、舞台のなかにすっと溶け込むような部分をもっていること。たとえば、大竹しのぶや深津絵里のように、舞台をさらうのではなく舞台全体を押し上げるような演技を彼女はできる。

今回はそれに押すようなパワーが加わって極上の演技となった

 

デビット伊東もよい。彼もある種の強さをしっかりと演じたが、そのメソッドは松永玲子と対極にある。松永玲子が放った強さを受け止めるような強さというか・・・

柔らかいがしっかりとした芯のある演技は見ているものを安心させる。

しかも、目にしっかりと強さがあり受け止めてはいるのだが、同時に松永としっかり並び立っているのがよい

 

八十田勇一、国分佐智子、野本光一郎の裁判官たちは多少道化が過ぎる嫌いもあるが、法曹の一面をしっかりと演じていたと思う。八十田のウィットはこのように社会的地位の高い役を演じていると非常に冴える。国分はちょっと演技の固さはあるが、しっかりとした意思を演じることができる女優で、今回もその堅さが逆に芝居になじんでいたと思う

野本も知的なもろさのような部分をしっかりと演じ切っており好感が持てた。

本間剛・星野園美は裁判シーンのなかでは、ちょっと演技が強すぎる感じがしたが、印象は悪くない。裁判という空間と一般の暮らしの間のギャップがしっかりを出すことが出来ていたと思う。その他の出演者もあたりまえによい演技であり、安心してみることができた。古川悦史はすこし演技として出来すぎで、もうすこし隙があったほうが帰ってよかったとは思うが、彼の演技がデビット伊東を生貸した部分が多く印象に残った。

 

裁判が持つ緊張感を損なうことなく、観客を巻き込むような感じで物語を醸成していったラサール石井・田村孝裕は本当によい役者に恵まれたと思う。

 

こういう作品は芝居好きをさらに劇場に駆り立てる。しっかりと評価されるべき作品だと思う