日時 劇団名 タイトル 会場

’06.6月14日 

方南ぐみ

THE面接

新宿シアターモリエール


作・演出 樫田正剛
出演
小林美江・USA(EXILE)・近江谷太郎t・津乃村真子
小山弘訓・長谷川朝晴・野口かおる・大堀こういち

この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい

劇評


stage review 2006

評価

★★★★★★★★☆☆

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企業の就職面接というシチュエーションは、舞台上で人間を表現するためにはとても都合がよいのだと思う。試験の開始からその結果、すなわち、事情の起承転結全てのシーンが必然としてあるので、その分観客は物語にはいりやすいし、面接というもの自体が受験者の(本人の意図するとせざるとに限らず)自己表現の場なので人物を舞台上に描いていくのにもとても都合のよい場なのだろうなとも思う。

一方その反面、その分コンテンツがあまりにも現実から乖離しいると、客が着いていけなくなりやすいので内容に対する制約やハードルは以外と高いのかもしれない。

 

この作品について、コンテンツのクオリティはよく出来ているといえばできているのだが、私がこれまで観てきたお芝居の中では、多分中の上くらいではないかと思われる。場面の展開にも無理がなく、いろいろと工夫や伏線があって、しかも物語の流れにも大きな破綻はなく、面接結果がどうなるのだろうというどきどき感も最後まで途切れることはない。

面接官の内面が比較的簡単に流される一方で、受験者達の内面が時間をかけてしっかり描かれていくのは、判断する側と判断される側の対比を表わすのにとても効果的だったし、得体の知れない近江谷太郎の試験官のメソッドは謎のままだったところも面接試験の実態をリアルに見せていたと思う。

ただ、台本全体として個々のよさはあってもデフォルメされている部分とリアルな部分が十分に混ざり合っていないところがあって、物語の流れに身を任せて観ていると舞台上の個々の個性が十分になじまないうちにひとつにまとめられた感じがした。一人一人の物語においては役者の力量もあって、それなりに瑞々しい人物像が浮かび上がってくるのだが、浮き出てくるものと最終的に流れていく物語にある種の違和感がでてしまうのだ。

コーラスライン的な試験結果の発表も悪いアイデアではないのだが、そこにいたる連帯感が芽生えるまでの過程が弱いのでシーンとしては非常に底が浅い印象を与えてしまう。その部分にどう至るかで観客を引っ張ってきただけに最後の底の浅さはけっこう痛い。

舞台が観客の心を射抜きそこねた瞬間でもある。

 

役者では近江谷太郎と長谷川朝晴の演技が目立っていた。しかし大堀こういち、小林美江の地道で深さと広がりを背負った演技も心にのこった。津乃村真子、小山弘訓は実はしっかりと抑えた演技だったのだと思う。舞台とのバランスがきちんと取れていて好演だったし、演技のキャパはもっとあるように感じた。USAは演技に力みがないところがとてもよく必要な存在感を必要なだけ舞台に供給していた。動きに切れがあるのだが、切れてはいけない部分でのやわらかい動きも見ていて気持ちよく印象に残った

野口かおるは役柄の不器用な部分とか妙に図太い部分を好演したと思う。但し、もっとピュアなぶぶんとどろどろした部分を前面に押し出してもよかったのではないか。彼女の演技力ならきっとできる部分で抑えたことが、物語の最後の試験での出来事の説得力を削いでしまった気がする。

 

よく出来た物語なのだが、泥臭くやるがデフォルメするか、そのバランスがもうすこしあればさらに魅力的な舞台になったと思う。ちょっと惜しい