| 日時 | 劇団名 | タイトル | 会場 |
|---|---|---|---|
’06.10月14日 |
G2プロデュース・フジテレビ |
Jail Breakers | 東京グローブ座 |
作:演出 G2 音楽・出演 松岡昌宏 出演 須藤理沙・河原雅彦・篠原ともえ・コング桑田 三上市朗 久ヶ沢徹 植本潤 川原正嗣 前田悟 久保酎吉 大高洋夫 |
この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい
決して悪い出来ではない。時間を忘れて楽しめたし、物語もきちんと観客を引っ張っていくだけの力を持っていたと思う。休憩を含めて3時間を越える芝居であったにもかかわらず終わってみたら時間をまったく感じていなかった。台本も、陳腐といえば陳腐なのだが、いくつかの伏線がしっかりと生きて、観客を納得させうる力を持っていたと思う。
お高めのチケット代(8800円)もまあそんなものかとは思うだけの内容はあった。
だが、なんというのだろう、完全燃焼ではないのだ。これだけの役者が集まったらもっと広がりの大きな8800円がお得になるような芝居ができた気がする。
役者の使い方などお化けがでるほどもったいない。
比較的しっかりとらしさが出せていたのは植本潤で、彼の演技にはひと膝乗り出すよな魅力があった。久保酎吉も彼の味がしっかりと物語を支えていたと思う。須藤理沙やゴング桑田も気持ちよさそうに演技をしていた。松岡昌宏はその魅力をしっかりと前面に打ち出せたのではないかと思う。
でも、この面子ならもっと舞台空間を肉厚にしっかりと作れるのでは・・・
一番もったいないと思ったのは三上市朗の使い方で、全体の中ではサブストーリーに当たる物語を演じるとはいえ、彼にもう少し時間と台詞を与えたならもっと物語に深さがでたのにと感じた。篠原ともえも好演でキャラクターがしっかりと浮かぶだけの演技ができていたとは思うが、彼女ならもっと切ない部分と強い部分の対比を表現できる力があるのにと思う。おまけにちょっと表現を急がされているような印象があった。
大高洋夫の刑事役は当然かつ十分機能していたが、他の役者と比較しても演技がきりっと切れすぎていた印象がある。彼が演じるには役が軽すぎて、他の役者達と十分に交じり合っていかないような部分があった。無駄のなさはある種の軽さにF1レーサーが軽自動車でドライブをしているような印象があった。
須藤理沙についても物語を構築するのに十分な想いは伝わってくるのだがそれを醸成するだけのスペースが舞台上になかった感じがする。
役者たちはしっかりと仕事をした。でもそこから踏み出すことができなかった。
音楽に関しても、同じような話がある。松岡のドラムには流石に力があり、演奏も決して悪くはなかった。ただ、突き抜けていかないのである。
篠原についていえば、最初のオーディション部分でのフレーズはぞくっとくるような迫力があったが、後半のボーカルにつしては音程に若干不安定な部分があった。コスチュームや仕草も含めて間違いなく魅力的ではあり、訴えるものはあったのだが、音程の部分が観客に「物語上はパーフェクトな歌唱というちょっとした想像力を強いることになった。本来、その部分は完璧な演奏が観客を引っ張っていくべきところだったのに。
同じ話は須藤理沙の「天城越え」にもあって、やはり歌唱的に苦しいところがあって面白さが大幅に減じられてしまった。「天城越え」についてはキュピキュピが題材にしていたことがあるがこちらは歌唱が完璧で芸術的な域に仕上がっていた。
このように、すべて作品が成立するのに足りるレベルを満たしてはいるのだが、でもこの作品はなにか足りない感じがするのだ・・・。
この作品で一番完璧だったのは河原雅彦だったのではあるまいか。須藤理沙のパンチラインのために何度も衣装を着替えて、しかも一回一回の登場ごとにしっかりと笑いを呼び込む。彼の演技は衣装や風貌によってぶれることなく、しかも彼の存在とストーリーの結びつきがうまくできていたことで観客にはしっかりと物語を受け入れることができた。
これは河原雅彦の力量があればこその演技だったが、同時に他の役者についてもG2はこのように一歩抜けた演技を期待しえたのではあるまいか・・・。
一歩抜けた演技の集積が作品のクオリティーを「Acceptable」から「Supreme」に昇華させていくのにと・・・。
やはりもったいないに戻ってしまう。
松岡昌宏についてもうすこし・・・。彼の演技力は期待以上であった。強い演技もしっかりこなすし弱い演技にもぶれがない。台詞にもゆとりがあり観客が寄りかかれる演技をしっかりしていたと思う。ただ、贅沢を言うならさらに舞台をさらうような力がほしいところ。舞台のなかでワンオブゼムに徹する手綱は十分にあるし、それゆえ舞台を壊すような前への出方は一切ないのだが、ここ一番で鞭をいれたときに劇場全体を瞠目されるような力もほしい。感情を強く外にときも観客すべてを自分の内に引き入れるときにももっと有効なパワーが使える才能が彼の中に眠っているような気がしてならない。それは一瞬への集中力でもあろうし、サッカーでいう玉ぎわでの強さのようなものだともおもうのだが、彼にはできるような気がする。
これだけの役者が集まって、ある程度までしっかりと作り上げられた作品、もう少しで観客をある種の坩堝にまで巻き込むことができた舞台。
何度も言うがお化けが民族大移動をするほどもったいない・・・