日時 劇団名 タイトル 会場

’06.10月22日 

劇団MCR
ヒマホテル(北側) 中野 ザ・ポケット
作・演出・出演 櫻井智也
  
出演
おがわじゅんや・北島広貴・伊達香苗
中川智明・山田奈々子・Laila.g.g.
福井貴朗・黒岩三佳(クレジット非掲載)

この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい

劇評


stage review 2006

評価

★★★★★★★★★☆

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いろんな部分がラフにできていて・・・、

でもこの話はラフでなければ成り立たないのだと思う

ラフだからこそ、表現できる感覚がメインになった芝居だから

 

一つ一つのシーンの作りが妙にソリッドで

しかもどこかルーズな笑いに満たされている

客と従業員の逆転した関係

何かに追い詰められた登場人物

あるいは常識的なこだわりに縛り付けられた夫婦

櫻井のしつこいくらいの突っ込みは

最初、鼻につくほどだが、

その突っ込みの中から現れてくるものを見せられて

彼の突っこみが非常に魅力的に感じられる

大道具のバネルの上下と箱だけで作られる空間では

固まった想いが次第にほどけて・・・

ルーズに煮詰められた時間のなかで

どこか中途半端な夏の終わりが

実感覚のなかで観客の心にひろがっていく

 

他のMCRの公演と同様に

今回も櫻井の作る舞台にはどこか抵抗できないような魅力が潜んでいて

それは緊張感を伴わない舞台だからこそ

観客が受け入れられるような類のもので・・・

でもアヒルが楽しく泳いでいても脚は激しく動いているように

実は様々な創意で満たされている舞台でもあった

 

ケーキを必死で食べるところを写真に取るところとか

甘さのないクッキーとか・・・

それだけのシーンでふっと世界が観客のなかに染み込んでくるような不思議

 

櫻井の最後の言葉、「東京に帰りたくねぇ」という一言が

様々なものを夏の終わりの風に晒して

理詰めでは表現できない舞台上に現れたいくつものの思いを

すっと透明に染めていった

 

櫻井以外の役者も見ていて安心感がある

山田奈々子の演技は献身的でなおかつ印象的、

間の取り方と突っ込むところでの思い切りのよさのようなものが

櫻井の演劇のリズムにみごとに合っていて

観ているものを舞台に引き寄せた。

伊達香苗の崩れ方も絶品、

よき妻の演技がしっかり出来ているから崩れ方にも説得力があった

中川智明はやや台詞が舞台のテンションから外れる部分があったが

ポイントをしっかり抑えた印象

おがわじゅんやの演技には理不尽な要求を受容する動機のようなものが

ニュアンスとして観客に伝わってきた

北島広貴にも思いをしっかり中にいれてから表現するようなゆとりがあって

伊達香苗との呼吸のようなものも非常に良かったと思う

lala.g.g.も理不尽な役だがきちんと説得力をもたせていたし

福井喜朗の演技もしっかりと持ち味をだしていたと思う

福井喜朗については声が非常に良く通って

芝居全体を力技で引き締める力があり

ひとつ間違えば舞台がだれるところをしっかりと引き締めていた

 

言葉で表現できるものはたくさんあるし、理詰めにしたり

無駄をしっかりと削ぎ落とすことではじめて表現できるニュアンスもある

しかし無駄がなければ表わすことができない感情も同時に存在する

MCRの舞台はリキテンシュタインの絵画のように

ポップでラフに、それらを表現したということだとおもう

 

余談であるがタイトルの映像もなかなか力作であった