| 日時 | 劇団名 | タイトル | 会場 |
|---|---|---|---|
’07.2月24日 S |
ク・ナウカ |
奥州安達原 | 文化学園体育館 |
大学の体育館を大きく使った少し変則的ではあるものの広々とした舞台。芝居が始まる前にはバスケットのリングやかすかな体育館の懐かしい匂い・・・。
やがて、野原有未の凛とした声が客席に響き始めると急に空気が艶を帯びてくるような感じがする。物語が持つ豊かさのようなものがその時点からもう会場を包み始める。
物語の導入部分は、単に観客に物語の予備知識を与える時間ではない。観客を物語の空間に取り込むための時間である。影絵によって示される物語は、やがて観客の前に提示されるであろう時間に観客が入り込むための準備運動がゆっくりと始まる。
物語はある意味凄惨なものである。因果因縁のドロドロがあって、それはなかなか初見の観客に肌でその心情まで理解させえるものではない。
しかし、ク・ナウカのSpeakerとMoverを分けた作劇は、動作で物語や登場人物の心情までもしっかり伝え、一方語り手の熟達した表現で物語の機微を空間に与えていく。
それよりもなによりも、今回一番説得力を感じたのは語り手のさらに外側にある音である。
雪の音、空気の凍える音、人が動く音。それも体が動く音、心が動く音・・・・。
音は、はるか昔の衣装をまとった役者達の動きに底なしのリアリティを与え、白く塗っただけの舞台前方にさえ、藁沓の残した足跡さえも見せる。音色とはよく言ったもので、音は語りと動きの舞台上に鮮やかな色すらつけるのだ。静の音、音によって静かさが伝わる。
かすかな気配、それが音によって色づけされ意味をもつ。音の交錯は意味の交錯、語りの輪郭に動きの面が作られさらに音が色をつけていく世界、体育館はまぎれなくみちのくの雪原に囲まれた世界に変貌し、観客はひたすら音が導く時間に身をゆだねることになるのだ。
それは、もはや、だれもク・ナウカの代わりになるものがないことを証明するような舞台。
芝居が終わった後、その夢から覚めるのに少し時間がかかった。
体育館の外、新宿の高層ビル群をみることがなければ、その夢はもっとずっと続いていたに違いない。
歴史にのこるようなパフォーマンスであったと思う
| 作:近松半二・竹田和泉・北窓後一・竹本三郎兵衛 台本・演出:宮崎聡 出演:
演奏:片岡佐知子 星村美絵子 奥島敦子 山本智美 塩谷典義 |
この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい