| 日時 | 劇団名 | タイトル | 会場 |
|---|---|---|---|
’07.4月07日 M |
1999.9年の夏休み |
アロッタファジャイナ | 吉祥寺シアター |
アロッタファジャイナ初見。元になった映画「1999年の夏休み」は未見。
それぞれのシーンについてみるとかなり硬い質感を感じます。比較的シンプルな舞台装置の影響もあるのでしょうが、しっかりとした輪郭をがれぞれのシーンをくっきりとさせています。また、役者達の台詞もとても強くはっきりとしていて、それは良い意味でシーンの広がりを抑制し物語のパーツとしてそのシーンを存在させていきます。
ガラスに描かれたシーンがいくつも重ねあわされてしだいに一つの絵が見えていく、そんな感じ。
時間と視点が多重構造に作られていることから、そのくっきりさがいくつもの世界を最終的に重ねる段階で大きな力を発揮することになります。
元になった映画を知らないので、どこまでが今回の創作なのかはわからないのですが、不連続にからんだ劇団の世界、4人+1人の少年達の世界、そしてさらにそれらを包括する今のつながり方がとても巧妙です。ねたばれになるのであまり詳しくは書きませんが、焼肉をおなかいっぱい食べた男女が店をでて、そこに店長がやったカルビの骨をしゃぶっている猫がいて、そしてそこから惨劇が引き起こされるという一連の流れは、まるでメビウスの輪のように世界を回転させていく。その見せ方がとてもしたたかなのです。
実が伏線がいくつも物語に渡されていて、そのすべてが観客にとってきれいにつながって見えるわけではないのですが、物語を支える鉄骨の部分がとても美しいデザインなので物語全体の中に包括されて溶け込んでしまうような感じを受けます。それは、この物語が誰の物語かが明かされる時、そして観客が物語のラビリンスから救済されるとき。適当に並べられたように見えた絵がひとつの世界を浮かび上がらせ、さらには5人の少年達の世界を立体的なものにし、さらに、その先にある物語が提示されるとき。切なさとある種の達観した強さのようなものが舞台と客席を結んで、戯曲の終わり・役者のbowにあわせて強い感動が観客に届けられます。
まあ正直言って、完璧な出来かといわれると、作品としてまだ改良の余地はあると思います。シーンの並べ方がちょっと饒舌にすぎて、実はシーン自体がもう少しすくなくてすむのではとか、やっぱり伏線の元の部分と解ける部分のつかがりがよわいとか、感じる部分はあります。
ただ、それを凌駕するものがこの芝居にはあるのです。
役者で一番目についたのは蒻崎今日子、前説の出来はともかく、本編での存在感がすごかった。出番はそれほど多くないのですけれどね・・・。医師役としての重さがちゃんとあるのです。(余談ですが、芝居が終ってからホワイエにいる彼女の姿の美しさには息を呑みました)。
未來も演技に底力があり舞台をしっかり動かしていたし、さらには舞台のトーンを微妙にコントロールする力も彼女にはあって舞台をしっかりと支えている姿に好感がもてました。強さの中に弱さを含める演技が出来ているのだと思います。
同じことが三松明人にもあって、この三人が一生懸命回して物語も流れたし舞台に大きな立体感が出たように思います。
また、新津勇樹、野木太郎、中村祐樹の3人も地道、かつしっかりと舞台を前にすすめる役割を果たしていました。
看護婦たちも赤の編みタイツがとてもセクシーだという以上の個性がそれぞれにあって・・・。青木ナナ・滝野裕美・井川千尋さらには婦長役の中川美智子を含めて看護婦が持つ白と赤のイメージを立体化させることにより、主人公の物語が持つ物語の虚実に説得力を与えていたと思います。とくに井川千尋にはふっと目を惹かれるような華がありました。
少年役の5人はそれぞれに個性がありましたが、そろって発声がきれいなのと、舞台上での緊張感が前編にわたってしっかりと保たれていたことには感心しました。また、個性の過度な露出が抑制されるような演出のかなで、それぞれの個性が減退するすることはありませんでした。それは彼女達がベースとして持つ何かのなせる技なのかもしれません。
役柄的に一番難しかっただろうと思うのは安川結花で、複雑な感情の出し入れが必要な役柄でしたが無難にこなしていた印象があります。ただ、ふっと感情を落とすときもう少し強い印象が欲しかったなという気はしましたが、逆に彼女の役柄を表す演技としては秀逸なものだったのかもしれません。
本田有花には凛とした雰囲気がありました。若干線が細い部分は感じられるのですがその線が絹糸というよりはピアノ線のような強さがあり、演技にも安心感があります。
阪田瑞穂にはある種の敏捷さというかしたたかさを感じます。同時に一番少年としての説得力があったかもしれません。
橋本愛美には演技を前に出す力がありました。観客に向かって前に出る力みたいなもの・・・。舞台にしっかりと根が生えているような演技でした。
須藤温子の演技には懐の深さのようなものがあって、少年の世界と他の世界を繋ぐトリガーをしっかり勤めていたと思います。演技自体に力とか強さを感じる部分はなかったのですが、しなやかに物語を紡ぐようなセンスが感じられて、物語が収束するとき、彼女の演技に観客は軟着陸をさせられたような部分がありました。
よく出来たお芝居だと思うのですよ。さまざまな個性がちゃんと芝居に深さを与えて、物語が終るまで、観客をぐっとひきつけるパワーもある・・・。
美少女といわれる役者がたくさん出演しているのですが、彼女たちの美しさは少年としての存在感に変換されて生かされていて、舞台が表現する力のようなものに対して物語に大きなプラスになっていました。
こういうしたたかな舞台というのは次をついつい見たくなるものです。
ちょっと情報のアンテナをこの劇団にも向けてみようという気になりました| 作・演出 松枝佳紀 スーパーバイザー:金子修介 出演: 須藤温子・橋本愛美・阪田瑞穂・本田有花・安川結花 三松明人・蒻崎今日子・ナカヤマミチコ 新津 |
この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい