| 日時 | 劇団名 | タイトル | 会場 |
|---|---|---|---|
’07.3月3日 S |
庭劇団ペニノ |
笑顔の砦 | 下北沢駅前劇場 |
| 作・演出 タニノクロウ 出演: 久保井研・飯田一期・山田一彰・山田伊久磨 矢島健・五十嵐操・瀬田タエコ・マメ山田 |
庭劇団ペニノは2度目。しかし今回のようなドラマ形式のものをみるのは今回が始めてである。
物語の構成は比較的単純で、むしろひとつのシチュエーションをプレパラートの上においてゆっくりと観察していくことに主眼がおかれているような気がする。
異質な生活感がふっと交わる瞬間、お互いに生じる化学反応のようなものが、ある種の実在感の元で描かれていく。
異質な生活が出会う部分は多少ぎこちないのだが、隣どおしの二つの世界が触れてからの表現が実に秀逸で、双方の世界の感情の流れが丁寧に描かれていく。二つの世界がぶつかった段階で双方のコアの部分が鮮やかに見えたような・・・。そこに最低限のエピソードがからんで・・・。登場人物達がそれぞれに直面する孤独が、やわらかく、でもしっかりとした輪郭をもって浮かびあがってくる。
それにつけても、それぞれの孤独がなんと細かい粒子でしかも深くえがかれていることか・・・。
一人ずつの世界にセットされた孤独にはしっかりとした透明感があり、それらが触れ合うときの音もため息がでるほど巧みに描かれている。一番鮮やかな印象を残したのは看護士役の五十嵐操だが、キク役のマメ山田にしても漁師役のそれぞれにしても、色合いの違う孤独が独立して、しかも絡みながら舞台の時間に溶け込んでいく。
決してリアルではないのだが、キーになる表現が実に巧みであり説得力がある。たばこの隠し場所からキクさんの世界観が鮮やかに広げたり、看護士としての枠を守ることで多喜子の閉塞感を漂わせたり。それらの表現力は繊細で圧倒的・・・。しかもしなやかで観客にやわらかくしみこんでいく。漁師たちの孤独はもうすこし表層的に描かれているが、しかし孤独の重さをけっしてなくしてはいない
要は総合力なのだと思う。繊細さだけでは表現できないもの、作り物では表現できないもの、力をかけないと表現できないもの、言葉でしか表現できないもの、言葉では決して表現できないもの・・・。それらが組み合わせられて初めて浮かび上がってくるものの質感はきわめて良質な孤独だち表現へと昇華していく。
マメ山田の怪演は別にして実直で足腰のしっかりした演技が、心にしっかりと残る演劇空間を作り上げた。
タニノクロウ恐るべしである
この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい