作:フェデリコ・ガルシア・ロリカ
台本・演出:白井晃

出演:
森山未來・ソニン・浅見れいな・岡田浩暉
新納慎也・尾上紫・池谷のぶえ・陰山泰
江波杏子

ギター演奏:渡辺香津美
日時 劇団名 タイトル 会場

’07.05月03日 S 

血の婚礼
アトリエダンガン プロデュース 東京グローブ座          

ストーリーはとてもシンプルです。すでに結婚している主人公が妻の従姉妹の元恋人が忘れられず、結婚式の当日に妻を捨てて元恋人を略脱、やがて夫となる男と決闘の末双方果てる・・・。それだけの話。

 

しかし、2時間弱の時間、このストーリーを追っていくだけなのに観客は手に汗を握ることになります。このストーリーに乗った登場人物たちの想いのぶつかり合いに観客は魅入られるのです。

基本的に登場人物の性格や心が変化することはありません。元々あるものが次第に明確になっていうだけです。明確になり、それぞれが次第に摩擦を起こしていく・・・。表層的な会話が次第にぎりぎりとこすれあう音に変わっていく感じ。静かに始まったものがたりもこのあたりになると次第に舞台に熱を感じるようになります。

結婚式あたりのシーンになるとぴんと張った舞台の緊張が観客を縛り付けて・・・。

役者達が自分の役を力量いっぱいに演じれば演じるほど、そこに悲劇の構造が浮かび上がってきます。

元婚約者に連れ去られた花嫁を探すときの人々の動きが暗示的です。まるで一本の線の上をたどるように動く役者達、運命の中で決められた役割を誠実にたどって(たどらされて?)いるように思えます。

登場人物が怠慢であるところに悲劇は成り立ちません。自分に誠実である登場人物が戯曲に指定されたように配置され動き出したときにこそ悲劇は成立する。闇と月の寓話が示すとおり、闇が隠すものを月がさらしたときに、浮かび上がる情念の結末を観客は固唾をのんで見つめ続けます。

ただ、演じるに簡単な戯曲ではないのかもしれません。見つめ続けさせる力がこの物語はしっかりと内在し、役者の技量を待っているようにも思えます。排気量の多いスポーツカーのようなもので、役者の演技次第でどんどんと観客を引っ張っていける・・・。そこが芝居好きにはたまりません。

 

役者の中ではまず江波杏子の演技に魅了されました。自分のペースを崩さずにしっかりと物語の基礎を固めていきます。舞台の外側に広がる畑や人々の雰囲気までが彼女の演技で見事に浮かび上がってきます。芝居全体のトーンは彼女の熟達した演技が作り上げたといっても過言ではありません。根岸季衣と陰山泰も力を内にためたような安定感のある演技でした。江波との比較でどこかに弱さの表現も必要な役柄、力の按排が抜群なのです。

浅見れいなの演技も繊細で実直でした。不安や哀しみがまっすぐに観客に伝わってくる・・・。彼女の演技が最後のシーンでのソニンの演技をしっかりと生かしたと思います。

岡田浩暉も役柄が持つ良い人の部分とと心の底に持つ闘争心の両面をうまく出していました。

尾上紫は足の悪い少女の無垢な憧れと月の持つ隠微とさえ思えるような冷徹さをひとつのトリガーとして演じて見せました。二つの役柄の共通項の作り方がとてもうまい。

池谷のぶえの何もかも包み込むような感じも舞台の雰囲気をしっかり支えていました。彼女の役は普段の生活の象徴というか、舞台の世界での生活基準線みたいな部分もあって、彼女の演技で物語にメリハリがついたと思います。

新納慎也は動きに美しさがありました。切れも十分・・・。ただ、闇から月の尾上紫に繋ぐまでの演技はもっと強くても良いような気がします

 

森山未來のステップは見ごたえがありました。苛立ちがしっかりと客席に伝わって・・・。

ただ、彼が苛立ちを台詞にぶつけたとき、観客に伝わる想いのロスが多く感じられたのが少しだけ気にはなりましたが・・・。

ソニンも好演でした。彼女の表現する花嫁の繊細さには硬質な意思がしっかりと組み込まれていて、夫を捨てる彼女の選択が実に自然に感じられました。強いていうならば最後の部分でもうすこしふてぶてしさがあっても良かったと思います。舞台を全部さらってもよいから、自分の想いを思い切りぶちまけるような強さというかパワーがあれば舞台はもっと締まったような気がします。

 

渡辺香津美のギターにも魅せられて一応満足の2時間でしたが、この芝居、公演の後半ではもっとばけるかもしれません。地方巡業をごらんになる方はラッキーかも・・・

劇評


この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい

stage review 2007

評価

★★★★★★★★☆☆

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