作・演出 倉持裕

出演:
小島聖・水野美紀・長谷川朝春
小林高鹿・ぼくもとさきこ・玉置孝匡
内田慈・近藤智行・吉川純弘
日時 劇団名 タイトル 会場

’07.05月26日マチネ  

M&O plays +
PPPP produce
ワンマン・ショー シアタートラム        

劇評


この文章にはいわゆるネタバレがあります。ご了承のうえお読み下さい

stage review 2007

べつに岸田戯曲賞にこびへつらうわけではないのですが、戯曲がまず本当におもしろかった。期待を遥かに超える作品でした。

枠組みがしっかりしています。で、その枠組みが崩れることなくバリエーションができていく・・・。まるでカノンを聴いているよう・・・。

 

ある意味実態のない物語にすこしずつ色がついて、舞台上のバリエーションが広がります。

名前に色がついていることで物語の区分けがしっかりできて、観客はその不可思議な世界の法則を無抵抗でうけいれるようになっていく・・・。

物語が誰のものか、あるいは物語の行き着く先は・・・。虚構の中に真実がうまれ、真実にたよって迷路に入り込む・・・。時系列が逆になったり入れ子になって、本来は当惑するはずなのに、なぜかかなりわくわくする・・・・。

キーワードや符号の使い方も効果的です。色が入った名前、人形、箱、よだれ、それらがトリガーとなって物語が透き通ったり変化したりする。野田秀樹は幾何学的演劇と評したそうですが、私にはトランプのシャフルのような演劇という感じもしました。

 

実際に描いているものって、実はとても重いものなのだと思います。でも、不思議なことに観劇中は重さを感じない・・・。むしろ違和感のある軽さというか・・・。パンフレットの表紙が波板のボール紙を使っているので厚さと比例しない重さだったのですが、それがそのままこの芝居の質感を表現していたような・・・。不思議な体験でしたね・・・。なぜかスタイルカウンシルの音楽を思い出していた・・・。質感が似ている気がするのです、ちょっと飛躍した感想ですが・・。

ロジックにしっかり固められていて、起承転結があるのに提示の仕方を微妙にずらすやり方に物事を浮き上がらせるような浮力が生まれ、ロジックが円滑に廻っていくような感じがするのです。

 

最後の種明かしも秀逸でした。箱から転がり出てくる役者たちの表情に、ふっと色が失われていくような感覚があって。

 

終わって、立ち上がったときに、ふっと取り込まれたような重さを感じました。倉持魔術が解けた瞬間。解けるまでかかったことに気がつかない魔法の時間・・・。倉持の洗練を感じたことでした。

 

役者で一番印象にのこったのはぼくもとさきこさん、切れが十分にありながらタッチがやわらかい不思議な役者さんでした。水野美紀さんは重量感がありなおかつ透明感をもっていることが非凡、小島聖さんには水野さんと対面にある重さがあってその対比がおもしろかった。彼女の艶は作品のなかでとても効果的に生きていました。内田慈さんの功績はリアルさを持っていたこと・・・。ナチュラルな中庸な演技がしっかりとできていて、おかげで観客は物語がいっそうわかりやすくなりました。

小林高鹿さんもよい役者です。繊細ななかに大きさがあるのがよい・・・。長谷川朝晴さん、玉木孝匡も好演、近藤智行さん、吉川純広さんにも舞台に馴染んだ切れがありました。

 

それにつけても、この感覚、倉持演劇独特のものだと思います。開放弦を見たときにもおもったのですが、全編にあるもてあますような軽さが積み重なって重さになっていく・・・。非現実と現実の世界の狭さと深さがその重さで色をつけられていくような感じ・・・。

 

ロジックが明確な不条理芝居、こういう配合だから成り立つ世界・・・、倉持演出の次をみるのが楽しみになりました。

 

 

 

 

 

 

 

評価

★★★★★★★★☆☆

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